OGeC022 (Sakurano Cup #3)
解説 : OGeC022(F)
1つめのヒントは、棚田が多く、稲作が盛んであることです。山間地で米の生産の多い地域が候補となりそうです。
2つめのヒントは、ため池が多いことです。1970年代より現在の方がその数は多いです。ため池の役割はいくつかありますが、農業の面では水の確保のほか、多雪地帯などでは冷たい雪解け水を一時的に貯めて温める効果もあります。また、ため池は農業のためだけでなく養魚池として活用されることもあります。よって、水の確保に苦労してきた地域や多雪地帯、内水面養殖が盛んな地域も候補となります。この地域では、棚田からため池に転換しているところも多く、農業から養殖業への産業のシフトの可能性も伺えます。
3つめのヒントは、(地図での読み取りが難しいかもしれませんが、)棚田→ため池以外にも、地形や土地利用の変化が生じたことです。具体的には、①学校西斜面における棚田の減少、②地図中央を東西に流れる河川沿いにおける水田の減少と河川工事(堰の設置、直線的な流路)などです。このような変化が生じた理由を推測すると、大規模な土砂災害が生じた地域も候補となります。
以上の考察も参考にしながら探索すると、画像の場所は新潟県長岡市の旧・山古志村とわかります。
実際、山古志地域は山間地の豪雪地帯に位置し、棚田と、農業用および鯉の養殖のための棚池(棚状のため池)が広がることで知られ、地域特有のこの景観は「日本農業遺産」に認定されています。棚池では、伝統的には食用鯉の養殖がされていましたが、現在では海外にも輸出される観賞用の錦鯉の養殖が有名です[1]。1970年代以降の減反政策にも促され、養鯉池が増加しました[2]。
また、この地域では、2004年の新潟県中越地震の際に複数の大規模な土砂崩れが発生しました。地図中央を東西に流れる河川では土砂崩れに伴い河川の閉塞が起き、砂防ダムの建設など復旧工事がされました[3]。
したがって、長岡市が答えです。
補足:山古志地域における棚田・棚池の成立
山古志地域を特徴づける自然災害として地滑りが挙げられます。地滑りは、新潟県中越地震における土砂災害のように生活の脅威となりますが、同時にこの地域ならではの農林水産業と、それと結びついた特色ある風景を形作りました。山古志地域は中山間地域にありますが、地滑りによって形成された緩やかな傾斜面が広がり、耕作に適した土地を得ることができました。また、地滑りによって土壌が混ざり合うことは、農作物の生育によい条件をもたらす利点もありました[4]。このようにしてできた地形や土壌のもと、豪雪地帯ならではのミネラルを含んだ豊富な雪解け水を用いて、棚田での稲作が盛んとなりました。
この地域では、棚田と合わせて棚池が作られてきました。棚池は、山間地で水を確保し、雪解け水を農業用水として利用できるように温め、さらに食用/観賞用の鯉を養殖するというように多面的な役割を持ち、山間地の豪雪地帯である山古志地域の暮らしを支えてきました。
参考文献: 1) 農林水産省(2024)「連載 旅する農業遺産『新潟県中越地域 雪の恵みを活かした稲作・養鯉システム』」aff(あふ)2024年4月号 2) 坂田寧代(2013)「灌漑用から養鯉用に転換されたため池の歴史と今後の可能性」水土の知81(8)pp.639-642 3) 土木学会 地盤工学委員会 斜面工学研究小委員会(2007)「新潟県中越地震 土砂災害学習マップ」 4) 山古志村史編集委員会(1985)「山古志村史 通史」pp.3-6
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